8. 補遺:深刻化する低線量被曝の実態と被曝防護 その2

細胞上での影響が大きい

ICRPのリスクモデルは、日本の原爆生存者の研究をベースにして発生する癌の数を予測しているので、自然放射線量の二ミリシーベルトや、フクシマ事故での被曝許容量の二0ミリシーベルトでは癌になる確率はとても小さいと考えています。その考え方は、実際、外部被曝に対しては当てはまるかもしれません。さもなければ、医療検査で使用されているCTスキャンやX線でも、人は外部被曝して癌になってしまうことになります。その線量の外部被曝では癌になる確率は小さいという考え方にしておかないことには、医療検査ができなくなってしまいます。科学者らは福島では癌の増加はあまり起きないと言っていますが、それはすべて外部被曝をベースにしているからです。

しかし、問題は内部被曝です。外部被曝が2ミリシーベルトであっても、内部の細胞には20万ミリシーベルト相当の影響を及ぼすのです。そして、そんな大量のエネルギーを受けた細胞が、癌や心臓病などさまざまな病気の原因となります。つまり、個々の細胞に高い線量を与える内部放射性核種が、健康被害を与えるわけです。

個々の細胞に高線量をもたらすのはアルファ粒子です。これは、ICRPでさえ、アルファ線を特別に扱っていることからも確かです。ミリシーベルト以外に、ミリグレイという単位もあります。面白いのは、ICRPは、X線やガンマ線については、1ミリシーベルト=

1ミリグレイとしていますが、アルファ線に対しては1ミリグレイ=20ミリシーベルトとしていること。つまり、アルファ線に対しては、量が20倍加重されるのです。アルファ線の崩壊を考える場合、20倍にするというICRPのアプローチは、実は、ECRRの内部被曝を考慮するのにも適用できる考え方です。

内部被曝では、いろいろな放射線荷重係数で乗じると、内部被曝量を推定できます。例えば、同じエネルギー下で、アルファ粒子が電子より20倍危険なものだとしたら、同じエネルギー下では、ストロンチウム90はカリウム40より300倍危険だと言うことができるのです。ECRRはそれを研究して、荷重係数を編み出しました。

ECRRは基本的にはICRPと同じモデルですが、放射線荷重係数を加えたものなのです。グレイからシーベルトを導き出すように。私たちの放射線荷重係数は、細胞が、DNAと結合した内部放射性核種あるいは高放射性微粒子から受ける余分の放射線量を考慮に入れて辿り着いたものです。もちろん、この係数は、体内で均等に分布するカリウム40には採用しておらず、均等に分布されない物質とDNAに明確な影響を与える物質に採用しています。

この荷重係数は、いろいろな放射性核種に被爆した人を疫学調査した結果編み出されました。例えば、核実験降下物による核分裂生成物から生じた放射性核種の影響はICRPが考えている影響の300~900倍。セラフィールドやチェルノブイリ、福島でも同じくらいの影響が出るでしょう。

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IAEAの隠蔽

では、土壌汚染についてお話ししましょう。これはベクレルという単位で表されます。放射能の強さと関係したもので、一秒間に一つの分裂が起きることを1ベクレルと言います。この単位が必要なのは、土壌に降下した放射線量を明示する必要があるからです。地域の汚染は、ベクレル/平方キロメートルで表示されますが、これにより、福島とチエルノブイりの汚染状況が比較できます。

チェルノブイリの立ち入り禁止区域は500キロベクレル/平方メートルまたは50万ベクレル/平方メートルでした。これは、1平方メートルの表面で、一秒間に50万回の分裂が起きているということです。

そして、この土壌汚染度は外部被曝線量と関係があることがわかりました(図⑥)。それは、セシウム137の場合、約330キロベクレル/平方メートルが1マイクロシーベルト/時に相当します。この関係を当てはめると、福島の汚染量について、IAEAが正しい報告をしていないことに気づきました。IAEAの発表した外部被曝率と土壌汚染度が大きく食い違っているのです。IAEAは、20マイクロシーベルト/時は0.9メガベクレル/平方メートル相当の汚染であると報告しました。しかし、私の計算では、20マイクロシーベルト/時は6メガベクレル/平方メートルという汚染になります。IAEAは表面汚染度を過小評価することで本当の恐怖を隠蔽していたのです。

 

⑥外部被曝線量とセシウム137による土壌汚染度の関係を示す表

1mの高さでの放射線量 

地表面の汚染度

(マイクロシーベルト/時)

(メガベクレル/平方メー卜ル)

  1

0.308 

  5 

1.54 

10 

3.08 

20 

6.16 

50 

15.4 

セシウム137による土壌汚染度と線量には表のような関係があるが、IAEAは土壌汚染度を過小評価していた。

  

圧力容器のトップ部分がない! へつづく

.........圧力容器の爆発を証明する写真をここに掲載します........