学術雑誌名:Proceeding of Nuclear and Emerging Technologies for Space 2011,Feb. 7-10
表題:A Hypothesis on Biological Protection from Space Radiation Through the use of New Therapeutic Gases.(新たな治療用ガスを用いて宇宙での被曝(ひばく)から宇宙飛行士を守る事が期待される)
著者:M.P. Schoenfeld, R.R. Ansari, A. Nakao, D. Wink.(所属機関:NASA宇宙飛行センター、ピッツバーグ大学)
概要:宇宙飛行士が長期滞在する場合放射線被曝(ひばく)は大きな障害となる。宇宙放射線を遮蔽する技術は現状ではまだ課題が多く被曝(ひばく)による飛行士の障害は問題である。放射線障害は放射線によって生じる酸化ストレスに起因するところが大きく、臨床症状の発現あるいは発症する前に酸化ストレスを防ぐ事が重要であろう。
本報では化学的及び生物学的技術を用いて酸化ストレスを軽減するシステムについて仮説を提案する。新たな医療用ガスとしての有用性の研究から、CO, H2、NO及びH2Sの放射線防御に於ける有用性を提案する。
分子状水素(H2)を初め、これらの治療用ガスは心疾患、ガン、慢性炎症、高血圧、虚血再還流障害、急性呼吸器疾患、パーキンソン病やアルツハイマー病等で認められた酸化ストレス抑制作用による疾患の予防・改善作用と同様に宇宙飛行中の放射線障害に対しても有効である事が期待できる。
A hypothesis on biological protection from space radiation through the use of new therapeutic gases as medical counter measures
宇宙飛行士への放射線被ばくは、生物学的影響の程度に関する現在の不確実性のために、長時間の有人宇宙探査にとって大きな障害となる可能性がある。さらに、保護遮蔽の概念は、現代の探査技術による宇宙線の性質と現在の質量と出力の制約のために、技術的に困難な問題を提起する。宇宙放射線への暴露に関する懸念は、酸化ストレスの増加に関連する生物学的損傷である。したがって、臨床症状および疾患の発症前に、酸化的ストレスを緩和および/または予防することが重要であり、これを可能にするであろう。この論文は、化学的緩和技術と生物学的緩和技術を組み合わせて使用する「システム生物学」のアプローチを仮定しています。ラジカル捕捉のための化学放射線防護剤として、そして曝露に対する身体の応答を管理するための生物学的な信号伝達分子として、新しい治療用の医療ガスを使用することを提案している。水の放射性化学、CO、H2、NO、およびH2Sガスの生物学的作用、ならびに放射線生物学のメカニズムを検討することから、このアプローチは放射線被曝の治療可能性を有する可能性があると結論づけることができる。さらに、心血管疾患、癌、慢性炎症性疾患、高血圧、虚血/再灌流(IR)傷害、急性呼吸窮迫症候群、パーキンソン病およびパーキンソン症候群を含む、酸化ストレスが関与している他の疾患の病因を縮小する同様の可能性を有するようである。アルツハイマー病、白内障、および加齢が挙げられる。我々は、これらの治療法をガス混合物の吸入または溶存ガスによる水の摂取を通して適用することを想定している。